護摩の座法

字輪観
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自分にふさわしい護摩の座法を求めて

理想的な座り方は、大日如来さまの足の組み方「結跏趺坐(けっかふざ)」です。左足を右ももの上にのせ、右足を左ももの上におく足の組み方です。尾てい骨と両ひざでつくる「三角形」でカラダを支えます。

慣れないうちは、すぐに足が痛くなって、じょうずに座っていられません。胴長短足の私には、たいいへんきびしい座り方です。

高野山金剛峯寺西塔本尊 大日如来像
高野山金剛峯寺西塔本尊 大日如来像

片足を下ろす「半跏坐(はんかざ)」という座り方もあります。半跏坐には、右足を左ももにのせるやり方(吉祥座)と、左足を右ももにのせるやり方(降魔座)があります。密教では、ふつうには吉祥座を、禅宗では降魔座を用いるようです。

私はその日の気分で、左右の足を入れ替えたり、足の組み方を浅くしたり深くしたり、工夫しながらやっています。ただしいったん護摩が始まれば、足の組み換え等はしません。

たしかに半跏坐はラクですが、結跏趺坐したときのように、尾てい骨と両ひざでつくる「三角形」がくずれやすいという欠点があります。人によっては、半跏坐で片足が浮き上がる人もいるかもしれません。そうゆうときは、腰に座具を当てて、うまく姿勢を整える必要があります。

禅家では、座禅の補助として座蒲(ざぶ)を用います。黒くて丸い、しっかりとした座布団です。試しにそれを買ってきて、中ワタを抜いて座蒲の厚みを調整して、何度か護摩を焚いてみましたが、燃える炎に供物を投じながら観想する護摩法には合わないように感じました。

それでいまでは、ふつうの小さな座布団を愛用しています。護摩の油と煤にまみれた頃、お信者さまが座布団カバーを新調してくださって、それがまた、修行の励みとなっています。ありがたいことです。

護摩を生活化する工夫

冥想にとって、座法は「土台」となる大切なものですが、お経などにはあまりくわしく説明されていません。座法はインドにおいて常識化されていたので、あえて説明するまでもなかったようです。真言密教の基礎修練となる四度加行でも、座法についての説明は多くありません。

土台となる座法は、試みと失敗をくりかえしながら、次第に見通しを立て、護摩にふさわしい座り方を見いだしてゆくほかありません。あせらず、あわてず、座って座って、自分にふさわしい護摩の座法を求めてゆくだけです。そのうち、護摩の所作を諳んじて、ムリなくスムーズにカラダが動くようになって、だんだん護摩にふさわしい座法が見えてきます。

行者と護摩壇との兼ね合いを見る

行者が座る礼盤(らいはん)と、実際に火を焚く護摩壇との兼ね合いを見ることも大切です。高すぎても、低すぎてもいけません。行者と炉との距離が離れすぎても、近すぎてもいけません。絶妙の間合いをカラダで覚えます。

護摩壇の結界として用いる門柱(もんちゅう)や四橛(しけつ)、壇線(だんせん)等も念入りにチェックします。ほかにも五宝、仏具、護摩支具など準備を怠りません。

何千回護摩を焚いても、一つとして同じ護摩は無いと言えるでしょう。だからこそおもしろいのです。正しい座法で、しっかり真言を唱えて、み仏さまの働きを観想します。やがて、行者と護摩壇と本尊が一つになります。ここに参拝者を引入し、如来の加持を受けるのです。そのための土台となるのが座法です。決しておろそかにはできません。

護摩祈祷 宝泉寺
金沢 摩利支天 宝泉寺 オンマリシエイソワカ
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