【諸尊壇】相互礼拝+相互供養=マンダラ世界

相互供養+相互礼拝=マンダラ世界

護摩供の第4ステージが「諸尊段(しょそんだん)」です。

仏様のマンダラ世界は、持ちつもたれつ、お互いさま!

相互供養と相互礼拝が織りなすマンダラ世界。

息災護摩法(仏・菩薩の力などによって災厄を消滅させる護摩法)では、諸尊段三十七尊を供養します。三十七尊とは、金剛界曼荼羅の根本の諸尊です。人、呼んで「マンダラ・オールスターズ」‼

諸尊段では、マンダラの諸尊を次のように勧請します。

諸尊段三十七尊配置図(図1)
諸尊段三十七尊配置図(図1)

尊名をあげると、次のようになります。

諸尊段で供養するマンダラの聖衆
五仏 毘盧遮那如来(中)⑥阿閦如来(東)⑪宝生如来(南)⑯阿弥陀如来(西)㉑不空成就如来(北)5尊
四波羅蜜菩薩金剛波羅蜜菩薩(東)③宝波羅蜜菩薩(南)④法波羅蜜菩薩(西)⑤羯磨波羅蜜菩薩(北)4尊
十六大菩薩菩提心門金剛薩埵菩薩(西)⑧金剛王菩薩(北)⑨金剛愛菩薩(南)⑩金剛喜菩薩(東)4尊
福徳門
金剛宝菩薩(北)⑬金剛光菩薩(東)⑭金剛幢菩薩(西)⑮金剛笑菩薩(南)4尊
智慧門
西
金剛法菩薩(東)⑱金剛利菩薩(南)⑲金剛因菩薩(北)⑳金剛語菩薩(西)4尊
精進門
金剛業菩薩(南)㉓金剛護菩薩(西)㉔金剛牙菩薩(東)㉕金剛拳菩薩(北)4尊
八供養菩薩内四供養金剛嬉菩薩(東南)㉗金剛鬘菩薩(西南)㉘金剛歌菩薩(西北)㉙金剛舞菩薩(東北)円輪内四隅4尊
外四供養金剛焼香菩薩(東南)㉛金剛華菩薩(西南)㉜金剛燈菩薩(西北)㉝金剛塗香菩薩(東北)第二重四隅4尊
四摂菩薩金剛鉤菩薩(東)㉟金剛索菩薩(南)㊱金剛鏁菩薩(西)㊲金剛鈴菩薩(北)第二重4尊
計37尊

これらの諸尊をマンダラの配置に従って尊別に分類し、所属・尊名・尊形・梵号・種子・三摩耶形(三形)・真言などについてカンタンにご紹介いたします。

密号(みつごう)密教における名前です。金剛号、潅頂号ともいいます。

種子(しゅじ)諸尊の具えている功徳などをあらわす梵字を高野山の一伝に従ってカタカナで記しました。

三形(さんぎょう)三昧耶形の略。仏菩薩が一切衆生を救済する本願を示すために手に持っているものなどです。

尊形(そんぎょう)仏尊のお姿を線描であらわしています。

真言(しんごん)ふつうよく用いる真言をカタカナで記しました。高野山の読みに従いました。

金剛曼荼羅の三十七尊

五仏

五仏(ごぶつ)とは、金剛界曼荼羅の根本となる5人の如来様です。
種子と真言には異説もありますが、今は中院流所伝によるものとします。

① 毘盧遮那如来(中央)びるしゃなにょらい

1, 毘盧遮那如来
  1. 密号 遍照金剛、無障金剛
  2. 種字 バン
  3. 三形 卒塔婆
  4. 真言 オン バザラ ダト バン

金剛界曼荼羅を説く『金剛頂経(こんごうちょうぎょう)』には、毘盧遮那如来(大日如来)と大毘盧遮那如来の区別が明確に説かれています。毘盧遮那如来とは教主で、曼荼羅の中心に位置する主尊。大毘盧遮那如来は曼荼羅そのもの、マンダラに登場するすべての諸尊の本体です。

法界体性智(ほうかいたいしょうち)=宇宙の本質を見抜く智慧

仏智の恒常不変な総体。この智慧の発する光明の働きが、以下の四仏の「四智」として示されます。

⑥ 阿閦如来(東)あしゅくにょらい

6, 阿閦如来
6, 阿閦如来
  1. 密号 不動金剛、怖畏金剛
  2. 種字 ウン
  3. 三形 横の五鈷杵の上に立てた五鈷杵をおく
  4. 真言 オン アクシュビヤ ウン
大円鏡智(だいえんきょうち)=完璧な鏡のような智慧

真実をそのままに、曲解や偏見を離れてとらえる智慧。毘盧遮那如来の東方に位置する阿閦如来があらわします。阿閦如来は、煩悩をのりこえる「菩提心」(さとりを求めようとする決意)を覚醒させます。

⑪ 宝生如来(南)ほうしょうにょらい

11, 宝生如来
11, 宝生如来
  1. 密号 平等金剛、大福金剛
  2. 種字 タラク
  3. 三形 三瓣宝珠
  4. 真言 オン アラタンノウ サンバンバ タラク
平等性智(びょうどうしょうち)=事物の同一性を知る智慧

現象はすべてひとつの事実の表れとして根本的な同一性を持ち、生命すべて限りない貴さをもつ点で平等であると知る智慧。南に位置する宝生如来が代表します。宝生如来は、修行の福徳によって、衆生の願いを満たす宝「如意宝珠」をそなえています。

⑯ 無量寿如来(西)むりょうじゅにょらい

16, 無量寿如来
16, 無量寿如来
  1. 密号  清浄金剛、大慈金剛
  2. 種字  キリク
  3. 三形  横の五鈷杵の上に立てた独鈷杵を茎にした開蓮華
  4. 真言  オン ロケイジンバラ アランジャ キリク
妙観察智(みょうかんざっち)=事物の本質を観察する智慧

主観的な価値判断を離れて心の対象を見つめ、その真の姿を知る智慧。西方の無量寿(阿弥陀)如来によって示されます。無量寿如来は、すべての衆生の苦悩や疑惑をそれぞれ見抜き、救済する如来です。

㉑ 不空成就如来(北)ふくうじょうじゅにょらい

21, 不空成就如来
21, 不空成就如来
  1. 密号 悉地金剛、成就金剛
  2. 種字 アク
  3. 三形 五鈷杵の上に羯磨杵
  4. 真言 オン アボキャシッティ アク
成所作智(じょうそさち)=すべての行いを成就させる智慧

人々を精神的に向上させ、最終的にさとりに至らせる智慧。北に位置する不空成就如来が表します。「不空成就」という尊名の由来は、確実に(空しくなく)仏様の働きを成就する尊という意味です。

相互に供養して拝み合う世界

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大日如来の四つの智徳が、阿閦如来・宝生如来・無量寿如来・不空成就如来の四仏となって顕現します。

四仏の作用が、それぞれの四親近菩薩の姿とあらわれて十六大菩薩となるのです。

四仏が大日如来に向かって奉仕する姿が、四波羅蜜菩薩(金剛波羅蜜菩薩・宝波羅蜜菩薩・法波羅蜜菩薩・羯磨波羅蜜菩薩)となってあらわれます。〈図2)

諸尊段三十七尊勧請図(図3)
諸尊段三十七尊勧請図(図3)

それに対して大日如来より、四仏に向かって供養されるのが内の四供養菩薩(金剛嬉菩薩・金剛鬘菩薩・金剛歌菩薩・金剛舞菩薩)です。(図3)

諸尊段三十七尊勧請図(図3)
諸尊段三十七尊勧請図(図3)

さらに四仏より、大日如来に供養するのが外の四供養菩薩(金剛焼香菩薩・金剛華菩薩・金剛燈菩薩・金剛塗香菩薩)です。(図4)

この大日如来と四仏が相互に供養することによって、これら五仏の徳がいよいよ輝きを増すのです。

諸尊段三十七尊勧請図(図4)
諸尊段三十七尊勧請図(図4)

相互供養を重ねながら大日如来はすべての生きとし生けるものをマンダラに引き入れ、導入し、留めおいて、歓喜せしむるために四摂菩薩(金剛鉤菩薩・金剛索菩薩・金剛鏁菩薩・金剛鈴菩薩)を出生させます。(図5)

これが、金剛界曼荼羅にみる諸尊による相互に供養し、相互に礼拝するマンダラ世界。さとりの智慧が躍動している姿です。

諸尊段三十七尊勧請図(図5)
諸尊段三十七尊勧請図(図5)

かつて、高野山親王院前官中川善教大僧正は、諸尊段における三十七尊出生の秘密について、次のようにおっしゃいました。

三十七尊出生の深重なる不思議事業は、真言行者能くこの三昧に入れば、供養雲海を起こして自他の利行を成就することができる。これ自身本具の佛性を顕在化したものであり、密厳浄土の現世なる顕現を具象したるものであり、金剛頂宗の真面目ここに在りといわねばなるまい。

現代風に言うなれば、次のようになるかと思います。

三十七尊が出生するという大変不可思議な活動は、弘法大師の教えを実践する人が首尾よくこの三昧に入れば、すべてに行きわたる供養をおこなって自らの仏道修行により得た功徳を自分が受け取りながら、他者の利益をもはかることができる。

これは、自分自身が持っていた仏性を形としてあらわしたものであり、密厳浄土は、実はこの世界がそれにほかならないことを具体化したものである。

真言密教の真面目、ここにありと言わねばならない。

まとめ

相互供養と相互礼拝が織りなすマンダラ世界

おかげさまで、ありがとう!
仏様のマンダラ世界は、持ちつもたれつ、お互いさま


三密によって荘厳される密厳浄土は、実はこの世界(今、私たちが生きている世界)が、それにほかならないことを三十七尊が教えてくれました。

私たちもまた、マンダラ世界を生きるネットワークの一員だということを!

この世に生きとし生けるものは、おのおのに供養して供養される、相互の関係によってのみ自ら生成し伸長をとげることができます。そのすべての供物によって、あるいは犠牲によって、おのおのが生かされているのです。

ありとあらゆるすべてのものは、いずれもすべて大日如来の生命を宿しています。自らの使命を自覚して、つとめはげみ、お互いに認めあって、尊敬しあって生きてゆかねばなりません。

及ばずながら私も、諸尊段で相互供養の三昧に入ってマンダラを供養し、そこで得られた功徳を多くの方々に差し向けたいと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。

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