毎月一日は、摩利支天のご縁日です。護摩と法話があります。

護摩木の秘密(2)なぜ年初めの甲子日に護摩木を伐るのか

年初めの甲子(きのえね)の日に護摩木を伐る

規定 護摩木となる原木を伐り出す日

大切な護摩修行を行うにあたって、「年初めの甲子(きのえね)の日をもって護摩木を伐る」という規定が定められています

下記の記事は、2020年(令和2)3月22日に護摩木をつくる原木を伐りに行ったときの様子が紹介されています。あわせてご覧ください。ちょうど新春二度目の甲子日でした。降雪で伐り出した原木を搬出しにくいので、当山では新春二度目の甲子に伐ることにしています。

目次

ではなぜ、年初めの甲子日に護摩木を伐るのか

ことさら理由をたずねることなく、師から習ったとおり、そうするものだと信じ、ただ実践してきました。

ところがある御本を読んで、「年初めの甲子の日をもって護摩木を伐ること」の意味を知りました。

ラーシュ・ミティング著、朝田知恵訳『薪を焚く』(晶文館)という御本です。ノルウェー人作家が2011年に出版して16万部のベストセラー。ご一読をおすすめします。

晶文社
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住職

本書を紹介してくれたクメクメ、ありがとう!

美しい装幀の御本。写真がまたすばらしいー

本書を拝読して、薪の意味と定義を初めて理解できました。

冬か春の早い時期に伐採することの利点は大きい。

時間をかけてよい状態で乾かすことができ、ノルウェーで「春乾燥」の薪と言えば、高品質の印となる。空気中の湿度が一番低くなる季節であるからだ。実際、零度以下でも乾燥は始まるし、ネイティブ・アメリカンが「寒い月」と呼ぶ一月に伐採した薪は、三月にはすでに乾燥によるみごとな割れが入っている。また、零下だと薪割りがはるかにしやすく、雪が積もっていれば小ぎれいに作業できる。(中略)

さらに、寒ければカビもそのほかの菌類も発生しない(多くは五度で発生し、活動を開始する)。(中略)

また冬眠していた害虫が春、目覚めても、初春にはすでに害虫が定着できないほど薪が乾燥している場合も多い。

しかし、雪が深く積もっていると、とくに大量の薪原木を伐り出す者にとってはかなり重労働になる。したがってノルウェーでは伝統的に、表面が凍結した雪の上に丸太を引き出せるよう、イースター前後に伐採が行われている。(67頁)

Hel ved 原題は『Hel ved』。硬い薪。強くて、信頼できる人物という意味もあります。
強くて、信頼できる人物は、なかなか火がつかないけれど、ひとたび火がつけば、ちょっとやそっとでは消えません。

薪をつくる樹木の伐採は、冬が春の早い時期にする利点

薪をつくる樹木の伐採は、冬が春の早い時期にする利点
  1. 時間をかけてよい状態で乾かすことができる ノルウェーで「春乾燥」の薪と言えば、高品質の印となる
  2. 空気中の湿度が一番低くなる季節
  3. 零下だと、薪割りがしやすい
  4. 雪が積もっていれば、小ぎれいに作業できる
  5. 寒ければ、カビもそのほか菌類も発生しない
  6. 冬眠していた虫が春、目覚めても、初春にはすでに害虫が定着できないほど薪が乾燥している

大切な薪づくりは、最高の時期にやっておけということですね。護摩木も同じ。「年初めの甲子の日をもって護摩木を伐ること」の理由がよくわかりました。なにかと利点の多い時期に護摩木をつくることは、歴代の護摩行者の経験則、叡知から来たものでした。

甲子(きのえね)は干支の第一番目。甲が木性、子が水性で相生(水生木)の関係にあり、また、干支の組合せの一番目であることから、甲子の日は吉日とされています。たいへんめでたい日でもあります。この日に、護摩木をつくらない理由が見当たりません。

信頼できる仲間とつくった最高の護摩木。ありがたく使わせてもらっています。感謝です。

ちなみにノルウェーでは、イースター(3月22日から4月25日のあいだ)前後に伐採がおこなわれるそうです。

まりちゃん

甲子木をとった日、3月22日
バッチリだね
古聖の教え、ありがたし!

イースターとは
キリストの復活を記念するキリスト教の祝日。三月二十一日ごろの春分後、最初の満月の次の日曜日。三月二十二日から四月二十五日のあいだで変動する。復活祭。

伐採するときの注意

薪づくり初心者が初めて森に出かけるときに大切なのは、自制という薬を一包、服用しておくことである

チェンソーで作業する場合、「親指の法則」(経験則の意)はデスクワークのときとは違う意味をもつ。(中略)

経験豊かな人についていくこと、絶対に犬や子どもを連れて行かないこと、小さな木から始めること、風が吹き上げるときには気をつけること。ちょっとした風が大木をどう揺らすかに注意しなければならない。最初のうちは中程度の大きさの木を正しい方向に倒すのも難しいし、風が吹き込めば、無慈悲な不安要素がまた増える。受け口が完璧で、なにもかもが正しく行われていたとしても、風が違う方向にひと吹きすれば大木が倒れて行くのを止めるすべはない。

森のプロ、ハンス・ボルリのことばを借りよう。

「一見、単純で荒っぽそうなこの仕事は、経験という厳しい学び舎でしか会得できない巧みな技やちょっとしたごまかし技、高度な技術にあふれている….. 木は思ったところに寸分違わず倒せるようにならなければならない。さもなければ、自分自身も〈宙ぶらりんのかかり木状態〉に陥り、あとでフェリングレバーや木廻しフックの作業で疲労困憊するはめになる」(62頁)

宙ぶらりんのかかり木状態
伐った木が別の木の上に倒れて引っかかったいる状態。

フェリングレバー
伐採した木を移動するための道具。テコの原理で持ち上げる。

自制という薬を一包、服用。

住職

することと、できることは、同じではない。
見えているものがまったく違う。
かんたんに見えるものほど、むつかしい。

金沢 摩利支天 宝泉寺 オンマリシエイソワカ

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