毎月1日、摩利支天のご縁日。午前11時から護摩と法話があります。

弘法大師の白法螺(商佉)

シャンクガイ

シャンクガイ(商佉)

先日、タイに旅行された井潟密雄僧正より、摩利支天さまにシャンクガイの奉納がございました。ここに謹んで御礼と感謝の言葉を申しあげます。どうもありがとうございました。

ついでにここで、シャンクガイと真言密教の関係についてご紹介いたします。

シャンクガイ
chank shell [学] Xancus pyrum
軟体動物門腹足綱オニコブシガイ科の巻き貝。インド西岸とスリランカに分布する。殻高15センチメートル、殻径10センチメートルぐらいに達し、厚く重い。全形は短い紡錘形をしている。殻質は白いが生時は厚いオリーブ色の殻皮をかぶっている。殻口はやや狭い紡錘形で、軸唇に四つのひだがある。ヒンドゥー教の聖貝として崇(あが)められ、ビシュヌの神の像はつねに手にこの貝を持っている。

ごく稀に産出する左巻きの奇形個体はとくに尊重され、貝殻と同じ重さの金と同価とされる。仏教のパゴダの中にも安置され、この貝でくんだ水は病気を治す奇跡をもたらすなどの信仰がある。また、この貝は殻が厚いので、輪切りにして装身具にも用いられる。〈参考文献〉小学館「日本大百科全書」

弘法大師の白法螺「シャンクガイ」

弘法大師のシャンクガイ

弘法大師のシャンクガイ

弘法大師の御請来品の一つに、白い法螺貝が東寺(京都市)に伝わっています。この貝は、「シャンクガイ」と呼ばれ、インド西岸やスリランカにしか生息しない貝で、弘法大師の『御請来目録(ごしょうらいもくろく)』の「白法螺貝一口」にあたると考えられています。この白い法螺貝は、大切な阿闍梨の付嘱物の一つで、もとは金剛智阿闍梨が南インドより持ち帰ったものでした。それを不空三蔵に伝え、不空三蔵が青龍寺の恵果和尚阿闍梨に与え、恵果和尚がまた弘法大師に賜ったものです。

この白い法螺貝は、いわゆる伝法の上で、欠かすことのできない潅頂道具(かんぢょうどうぐ)の一つです。

弘法大師の師である恵果和尚(けいかかしょう)は、日本の若い留学生(空海さま)に、その師から受け継いだインド渡来の聖なる貝を授けたことになります。東寺に伝わるシャンク貝は、インドから、中国長安にもたらされ、さらに日本の京都東寺へと旅をしてきたのです。

日本では、この白い法螺貝を「商佉(しょうきゃ)」と呼んでいますが、恐らくはインド語「シャンク」が中国に渡って音写され、「商佉」の漢字を当てられたのではないでしょうか。それがそのまま、密教の伝授にともなって、恵果和尚から弘法大師に伝えられ、今日にまでいたっているようです。

インド神話のヴィシュヌ神の持ち物「シャンクガイ」

Viṣṇu

Viṣṇu

ヒンドゥー教でも、シャンクガイは、聖なる貝としてことのほか大切にされ、太陽神ビシュヌ神の手には必ずこの貝が見えます。ビシュヌ神は、ヒンドゥー教三大神(ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァ)の一として、万物を生み出す根源と見なされています。

ビシュヌ神は、世界の維持と繁栄をつかさどる最高神。最大の特徴は10の化身(アヴァターラ)があることです。しかるべきときにしかるべき姿であらわれ、善を守り悪を滅ぼします。

インドでは、ヴィシュヌ神の代わりにこの貝をまつるそうです。ヴィシュヌ神がこの貝笛を吹き鳴らすと、神々は勇みたち、悪魔は逆に震え上がるともいわれています。

ごく稀に採れる、左巻の貝で作った《聖笛》は、中国やインドにおいて仏塔に納められ、国王の戴冠式の祭具として使用されるようです。

ヴィシュヌ神の化身「ヴァラーハ」

ヴィシュヌ神と化身ヴァーラハ

ヴィシュヌ神とその化身「ヴァーラハ」

ヴィシュヌ神は、人々を救うため10の姿を借りて、人間世界に生まれ変わって登場するといわれています。その一つに「ヴァラーハ」と呼ばれる巨大なイノシシの化身(アヴァターラ)がいます。ヴァラーハとは、「野猪(のじし)」という意味。長い牙をもった猪の姿をしており、この牙で大地を支えるといいます。

このイノシシが、摩利支天(三面八臂像)の三つある顔のうち「左向きの顔」として表現されているということです。〈参考文献〉森雅秀「インド密教の仏たち」春秋社。

ヴァラーハは、悪魔によって沈められた大地を救うために、猪となって大地を持ちあげたと伝えられています。真理を追究する者は、凄まじい勢いで真っすぐに突き進むイノシシのように、あらゆる犠牲を恐れることなく、進むべきであることを象徴しているのです。

猪突猛進です。

真言密教のマンダラにみる「那羅延天」

ヴィシュヌ神は、梵語を音写して「毘紐天(びちゅうてん)」と書き、真言密教では「那羅延天(ならえんてん)」と同體または化身(アヴァターラ)とされています。

那羅延天は、「堅固力士」や「金剛力士」とも呼ばれる、たいへん力の強いパワフルな神様。インド古代神話のビシュヌ神と同体とされています。那羅延天の像容には一面二臂と三面二臂などの姿があり、三面のときは中央が人間、左方にイノシシ、右方に象あるいは獅子(または左右ともにイノシシ)の面であらわされます。乗り物は迦樓羅鳥です。

那羅延天は、真言密教の両部マンダラのなかにもが登場します。

胎蔵曼荼羅では、最外院の西方に三面二臂像であらわされ、イノシシのよう面をつけています。手にはシャンクガイを持たず、右手をかざして輪のような物を指先で回す姿です。

金剛界曼荼羅では、外金剛部二十天の一尊として、一印会をのぞく各会の東方に一面二臂像(三昧耶会と降三世三摩耶会は三昧耶形=さんまやぎょう)が描かれています。三昧耶形とは、仏さまをあらわす象徴物のことです。

真言密教において、那羅延天は強力の持ち主であるところから「天の力士」といわれ、相撲の祈りに那羅延天の法を修法することになっています。

山門の仁王尊としての「那羅延天」

那羅延天は、密迹金剛(みっしゃくこんごう)とともに、仁王尊(におうそん)として寺院の門に立って仏法を守護しています。一説によると、仁王尊の阿形(「ア」と口を開けている尊)が那羅延天で、吽形(「ン」と口を閉じている尊)が密迹金剛だといわれています。いかにも大力の持ち主にふさわしい尊容ですね。

高野山大門の仁王尊(阿形)像

高野山大門の仁王尊(阿形)像

那羅延天の真言
・ノウマクサマンダボダナン ビシッダビイ ソワカ(胎蔵)
・オン バラバザラ ソワカ(金剛界)

まりちゃん

小さな白い貝から、ドンドン話がふくらむな〜
これも、ヴィシュヌ神のアヴァターラのせい?

オンマリシエイソワカ