摩利支天のお正月〈年末年始のご案内〉

宝泉寺、金沢市「保全眺望点」に選定さる。

眺望点に長町と宝泉寺(北国新聞、2018年9月15日)

眺望点に長町と宝泉寺(北国新聞、2018年9月15日)

来年度、金沢市のひがし茶屋街や兼六園など、とくに眺めが優れた地点「保全眺望点」に、長町とともに宝泉寺が追加されることになりました。

眺望点に長町と宝泉寺、新たに2地点追加。

市議会建設企業委 新たに2地点追加 新条例に合わせ

市は来年度、ひがし茶屋街や兼六園など特に眺めが優れた地点「保全眺望点」に、長町と宝泉寺(子来町)の2地点を加える。保全眺望点から景観を守る「眺望景観形成条例」(仮称)の制定、施行に合わせて指定する。条例では、保全眺望点から距離に応じて建物の高さや色彩、夜間の照明などに基準を設ける予定で、施行後は、さらに保全眺望点を増やし、金沢の魅力向上と継承に取り組む。

市議会5常任委員会が14日開かれ、建設企業委で市側が報告した。

保全眺望点は、2003年に浅野川大橋、主計町(かずえまち)、ひがし茶屋街。犀川大橋、兼六園眺望台の6エリア8地点が指定された。市は、市景観条例のもと眺望点から視界に入る区域で建物の高さや色などを保全する基準を設けたが、努力義務となっていたため、実効性を高める目的で新条例の制定を目指している。

新条例に合わせ、市内の景観保全の範囲をより広げるため保全眺望点の追加が検討された。03年以降に重伝建(重要伝統的建造物群保全地区)や景観地区に指定された地域が候補となり、長町と宝泉寺が選ばれた。

市側は新条例について、追加指定する2地点を含め10地点を「川筋見通し景観」「見下ろし景観」「まちなみ見通し景観」の三つに分類し、それぞれの特性に合わせた保全を行うとした。

眺望点からの距離によって景観に与える影響が違うことから、眺望点からおおむね半径500メートル以内を「近景形成区域」、それより遠い区域を「中遠景形成区域」とし、それぞれ異なる基準を設ける。

市は10、11月に各保全眺望点の形成区域にある14町会連合会の235町会を対象に意見交換会を開く。12月には条例の骨子案についてパブリックコメントを実施し、来年の市議会3月定例会に条例案を提出、来年度中の施行を目指す。

(2018年9月15日、北国新聞)

文豪が絶賛、宝泉寺からの眺望。

宝泉寺からの眺望は、芥川龍之介や泉鏡花、ドナルドキーンが絶賛。「金沢一の絶景どこ」としてよく知られています。

1924年(大正13)5月、室生犀星の招きで金沢を訪れた芥川龍之介の心をとらえたのは、卯辰山のふもと宝泉寺からの眺望でした。芥川龍之介は、「金沢一の絶景」と褒めています。

泉鏡花は、宝泉寺からの眺望を題材にいくつかの作品を残しています。その一つをご紹介いたします。「町雙六」という作品です。

泉鏡花

泉 鏡花
参考 泉鏡花と五本松 | 摩利支天摩利支天

町双六(まちすごろく)の風情

泉鏡花は、宝泉寺からの眺望の風情を小説「町雙六」のなかで、「絵にかいたスゴロクの風情だ」と表現しています。スゴロクは、いまでいう「ボードゲーム」ですね。

あの五本松の梢に彳(たたず)んだ姿である。其の五本の枝はづれに、城下の町は、川も、橋も、城も森も、天守の櫓も、處々に薄霞した一枚の繪雙六の風情である。

一人は胡粉で、一人は墨で、男女の名をかいた札が賽の目に從つて、遊びに出たやうで、はじめ墓の前の堆い松の落葉に外套を敷いて、並んで坐つて、此の景色を詠めた時は、五本松の茂の中に、大きな賽が、ころんと掛つた。 

‥‥‥ 遙かな海へ入方の陽は、紅で染めた目の一であつた、そして、此の丘を取卷いた雪の連山は、賽を水晶に輝かした。

(泉鏡花「町雙六」)

宝泉寺にそびえるご神木「五本松」の枝の先々に見える金沢の城下町は、川も、橋も、城も、天守の櫓も、所々に薄いカスミをあしらった1枚の絵に描かれたスゴロクのよう‥ 

そしてこの町で暮らす人々の営みを賽(さい)の目の一つ」と、鏡花はみています。

はるかな海への入方の陽(夕陽)は、紅で染めた目の一つこの丘を取り巻いた雪の連山は、賽を水晶に輝かす

ああ、なんという美しい風景でしょう。

「町双六」五本松宝泉寺から見る金沢の雪景色 

「町双六」五本松宝泉寺から見る金沢の雪景色

絵双六(えすごろく)とは、紙面に多くの区画を作って絵をかき、数人が采を順に振って出た目の数によって「ふりだし」から駒を進め、早く「あがり」に着いた者を勝ちとするゲーム。江戸時代に起こり、道中双六などさまざまな種類があります。

浅野川をはさんで、金沢城と対面する絶景は、町の暮らしが見え、生活の声が聞こえる絶妙の高さ。ここから見ると、町がまるで絵にかいたスゴロクのように見えるんです! こんなシーンは、宝泉寺からしか見られません。

城下町金沢にとって、すっごく大切な宝泉寺からの眺望。後の時代にしっかり伝えていきたいと思います。

金沢城と対向する高台から見る黒瓦がとても素敵。
夕景のあまりの美しさに、涙ぐむ人もいらっしゃいます。

まりちゃん

金澤勝地賑雙六(かなざわめいしょうにぎわいすごろく)石川県立歴史博物館所蔵

参考までに、石川県立歴史博物館には1868年(明治10)の金沢の名所をかいた色刷り双六(町双六)が収蔵されています。

金沢勝地賑雙六 石川県立歴史博物館

金沢勝地賑雙六 石川県立歴史博物館

 

参考 学芸員おすすめの所蔵品500 | 石川県立歴史博物館学芸員おすすめの所蔵品500 | 石川県立歴史博物館

荒御魂の魔神の棲家(アラミタマのマジンのスミカ)

摩利支天をまつる本堂に来ると、いつも張りつめたものを感じる。五本松があるからだろうか」という人が少なくありません。

鏡花の「町雙六」には、「魔所」だとあります。

「さあ、五本松。此處まで二町には足りない坂だが、隨分急だね。 

(略)

小山を切通しの細い石段が、落葉の鱗、青苔の紋を染めて、龍の斜めに臥したる状ある、一ツ小山の頭に、城下十萬軒の門松を取つて、一束にしたるが如き、根より五株、中空に聳えた松がある。

 カチリ/\と、其處とも分かず、高き梢に羽子の音が幽に響いて、瞰下す町家は、道條も、屋根の數々も、急に此の緑の影に、薄暗く成つて颯と風。 ーー

 魔所なのである。

(泉鏡花「町双六」より)

ひがし茶屋街から宇多須神社の石垣を通ると、急な坂が見えてきます。子来坂(こらいざか)です。ここを上がりきって、右に曲がると、五本松で有名な宝泉寺の境内です。

鏡花のいうとおり、2町(1町=約109.09メートル)には足りない坂ですが、斜度15度。クルマが走る金沢一の坂道として知られています。

鏡花が「龍の斜めに臥したる状(さま)ある、一つ小山の頭に、城下町10万軒の門松を取って、一束にしたような、根から5株に分かれ、天空にそびえる松があります。「五本松」です。

風が吹くと、カチリカチリと松が鳴るといわれています。

むかしから「魔所」として恐れられています。

【朗読】泉鏡花の小説「町双六」(部分)をきく

【朗読】泉鏡花「町双六」

「町双六」の舞台となった「五本松」とその眺望に関する記述を抜粋。朗読の一部をご紹介します。▷ クリックすると朗読が始まります。 Kyoko

(2分24秒)

泉鏡花の小説「五本松」

ではなぜ、五本松宝泉寺が「魔所」といわれるのでしょうか?

泉鏡花の他の作品にも、当山の「魔所」たる由来が出てきます。

泉鏡花の「五本松」には、夜中に周囲の迷惑を顧みず大声で歌ったり、詩を吟じたりして、ご神木「五本松」の近くを通った者が、帰宅後、幻覚や幻聴に襲われる怪奇談が紹介されています。

五本松と云って、幾年經るか、老松一株、岳の嶺に立って居るが、根から五本に別れて、梢は丸く繁って居る。

大屋根に上がると、土蜘蛛の蟠ったやうな根から梢まで、間近にあからさまに見える。其の橋の上からでも、辻の角からでも、路地の中からでも、櫺(=木+霊)子の窓からでも、凡そ全市街の要處々々、此松が見えて、景色を添へない處はない。

石燈篭を置くにも、遠景に此松を控へ、池を造るにも、眺めに此松を添へると云ったやうなもので、其の癖慰みにあしらふべきものではなく、荒御霊の魔神の棲家であることを誰も知らないものはない。尤も幹の周囲には注連を飾って、傍に山伏の居る古寺が一宇ある。此の神木に對し、少しでも侮蔑を加へたものは、立處に其の罰を蒙るといふ。

(泉鏡花「五本松」)

荒御魂の魔神の棲家「五本松」

荒御魂の魔神の棲家「五本松」藩政期のイメージ

五本松宝泉寺が魔所である由縁(泉鏡花「五本松」より)

五本松がある宝泉寺が、魔所であるゆえんを列記すると、次の通りです。

五本松宝泉寺が魔所である由縁 by 泉鏡花

  • 根から5本に別れて、梢が丸く繁っている
  • 大屋根に上がると、土蜘蛛のわだかまったような根から梢までが間近にあからさまに見える
  • 橋の上からでも、辻の角からでも、路地の中からでも、れんじの窓からでも、およそ全市街の要所要所、この松が見え、景色を添えない所はない
  • (自宅の庭に)石灯籠を置くにも、遠景にこの松をひかえ、池を造るにも、眺めにこの松を添えるというように
  • 荒御魂(あらみたま)の魔神の棲家(すみか)であることは、誰も知らない者がいない
  • 幹の周囲には注連縄をかざっている
  • かたわらに山伏のいる古寺がある(高野山真言宗 宝泉寺=山伏ではないが、毎日護摩を焚く行者がいる)
  • 五本松に対して少しでも侮蔑を加えた者は、たちどころにその罰をこうむるという(バチがあたる人がいまでもいる)

昔も今も、魔所として畏れられるゆえんは、ここにあります。

だからこそかもしれません。しっかりおまいりされる方は、確かなご利益をいただかれています。

参考 御神木「五本松」 | 摩利支天摩利支天

まとめ

宝泉寺が金沢城の鬼門の正面に当たる「魔所」であると同時に、ここからお城と城下が一望できてしまう「急所」でもあります。

 

それゆえにこの「要所」から城下町を丸く治めるために、摩利支天(マリシテン)がまつられたのです。

 

百万石の城下町金沢の歴史と発展を考える上で、外すことができない大切な保全眺望点の一つ、それが宝泉寺なのです。これまでも、これからも‥

保全眺望点を守るため、
住職が崖の草を刈り、
壇信徒有志が樹木の枝打ちをしてるよ。
腰にロープをまきつけて‥

まりちゃん

参考 摩利支天山略縁起〈金沢宝泉寺〉 | 摩利支天摩利支天

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