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マンガ備忘録| 巻来功士『SHODO 勝道上人伝』

巻来 功士『SHODO 勝道上人伝 』(ヤングジャンプコミックス)

巻来 功士『SHODO 勝道上人伝 』(ヤングジャンプコミックス)

小笠原正仁先生から教えていただいた『SHODO 勝道上人伝』なんども繰り返し読ませてもらっています。

日光山の開闢1250年を記念して、聖僧・勝道上人をテーマにした巻来功士先生の渾身の作。血がたぎる高僧伝(マンガ)です。

勝道上人は、奈良時代に二荒山(ふたらやま)の頂上をきわめる「禅頂行」をなした高僧で、「日光開山の祖」といわれています。日光修験は、勝道(735〜807)上人が天平神護二年(766)輪王寺の前身である四本龍寺を開いたのにはじまっています。

勝道

奈良末期・平安初期の僧。俗姓若田氏。下野(栃木県)の人。天応二年(783)補陀落山(日光山)を開き、中禅寺を創建、上野国の講師(こうじ)に任ぜられた。天平七〜弘仁八年(735〜817)。

(『精選版日本国語辞典』より)

弘法大師『遍昭発揮性霊集』「沙門勝道山水を歴て玄珠を瑩く碑」にみる勝道上人のご修行

勝道上人の著作は現存せず、著作についての伝承もなく、また、上人に関する史料も少ないといわれています。

ただ勝道上人と同時代の史料として、弘法さまが弘仁五年(814)に上人の事績を記した碑文(勝道碑文)があり、「沙門勝道山水を歴て玄珠を瑩く碑并びに序」として、『遍昭発揮性霊集』巻第二に収録されており、この碑文によって、おもな仏業を知ることができます。

勝道上人は、補陀落山(二荒山)の登拝を志し、二度失敗。天応二年(782)3月登頂に成功します。その時には写経し、仏画を描いて祈念をこめたうえで、これらのお経や仏像を笈に入れ、裳をさいて足をつつんで出発。さらに山麓で七日間にわたって祈念をこめたうえで山に向かい、登頂に成功します。そしてそこにあった神窟の南西に庵をもうけて、二十一日間にわたって礼讃しています。

ついで延暦三年(748)三月下旬ふたたび登頂し、五日間留まったうえで下山し、山麓の中禅寺湖を小船でめぐり、湖岸に中禅寺と二荒権現(ふたらごんげん)を勧請。

さらに大同二年(807)には国司の依頼で登頂して、参上で雨乞いと百穀豊穰の祈念して効験をおさめています。

性霊集のなかから勝道上人をたたえる碑文に刻まれた四字句の韻文を読みくだしであげておきます。マンガを読んだあと、声に出して読んでみてください。

あのシーンがよみがえります!

雞黄(けいくわう) 地を裂き
粋気 天に昇る
蟾烏(せんう) 運転して
万類 跰闐(へんてん)す
山海 錯峙(さくら)し
幽明 阡(みち)を殊(こと)にす
俗波は生滅し
真水は道の先なり
其の一

(現代語訳)
天地の渾沌たる中から、大地は天から引き裂かれ

純粋の気は上に昇って天になった、以後
月と日は回転し
万物は集まりうごめく
山と海は配置され
あの世とこの世は分かち隔てられた
世俗の世界は生成滅亡をくりかえすが
真理は人の道を先導するものである
其の一

 

一塵 獄を構(かま)へ
一滴 湖を深くす
埃岑(あいけん) 委聚(いしゅう)して
神都を画飾す
嶺岑(れいしん) 梯(てい)にあらず
鸑鷟(がくぞく)も図ること無し
皚皚(がいがい)たる雪嶺
曷か矚(み) 誰か廬(いほり)す
其の二

(現代語訳)
一つまみの塵(ちり)、それが積もって山を形作り
一滴の水、それが重なって湖を深くする
塵と滴(したた)りは蓄積されて
神仙の居所を飾りたてる
峰々には梯(かけはし)もなく
鳳凰(ほうおう)も頂上まで行こうと企てない
白々とした雪の嶺(みね)
誰が身をとめ、誰が庵をあんだんか
其の二

 

沙門勝道
竹操松柯(しょうか)あり
之(こ)の正覚(しょうがく)を仰ぎ
之(こ)の達磨(だるま)を誦(じゅ)す
観音に帰依(きえ)し
釈迦を礼拝す
道に殉(したが)ひて斗藪(とそう)し
直ちに嵯峨(さが)に入る
絶巘(ぜっけん)に龍跳し
鳳挙して経過す
神明 威護して
山河を歴覧す
其の三

(現代語訳)
沙門勝道は
竹や松の節操をもち
この仏果を慕い
この仏法をとなえ
観音に帰依し
釈迦を礼拝し
仏道に身を捧げて修行に専念し
まっ直ぐに険しい山に入り
突っ立った峰に龍の跳ぶがごとく登り
鳳凰の舞い上がるごとく通り過ぎた
神々は加護したまい
山河をつぎつぎと遊覧した
其の三

 

山也(や)崢嶸(さうくわう)たり
水也泓澄(わうちょう)たり
綺華(きくわ)灼灼たり
異鳥 嚶嚶(あうあう)たり
地籟 天籟
筑の如く箏(さう)の如し
異人 乍(たちま)ちに浴し
音楽 時に鳴る
其の四

(現代語訳)
山はごつごつとそびえ
水はすみわたる
美しい花はきらきらと耀き
珍しい鳥はピイピイと鳴く
地上の響き、天上の響き
筑(こと)のようであり、箏(こと)のようである
すぐれた方がふと訪れてその中にひたると
音楽が其れに応じて鳴りわたる
其の四

 

一覧 憂(うれひ)を消し
百煩 自(おのずか)ら休す
人間に比莫(たぐひな)し
天上にも寧(なん)ぞ儔(とも)あらん
孫興(そんこう)も筆を擲(なげう)つ
郭詞(くわし)も豈周(あにあまね)からんや
咄哉(ああ) 同志
何ぞ優遊せざる
其の五

(現代語訳)
一たび見わたすと、憂いは消え去り
くさぐさの煩悶は自然になくなる
人の世にくらべるものなく
天上にも匹敵するものがあろうか
孫興(そんこう)公も筆を投げ捨てるであろうし
郭璞の詩も描きつくすことができようか
ああ 志を同じくする者よ
どうしてのんびりと遊ばないのか
其の五

 

2017年2月17日発行
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