摩利支天のお正月〈年末年始のご案内〉

宝泉寺|金沢市民の「秘密の名所」宝泉寺からの眺め

金沢の冬景色 宝泉寺からの眺め

私的ほくりく百景

金沢宝泉寺からの眺め

「自分の街」しみじみと

「今、自分はここで生活しているんだな」と、しみじみと思った。金沢市子来(こらい)町の高台にある宝泉寺から市街地を眺めた時のことだ。

宝泉寺程近くの東山で、長唄三味線を習い始めたのは、2016年9月。そのころ既に、金沢に赴任して一年以上がたっていた。岐阜県出身で一人暮らし。地域とのつながりはほとんどなく、自分と同じ境遇の仕事仲間や、同僚とばかり交流して、どこか「よそ者」という気持ちは消えていなかった。

三味線を始めると、同じ教室の中で知り合った地元の人と出会い、徐々に交流するようになっていった。地元の話題もするようになり、ようやく自分も金沢の街の一員になれてきたように感じていた。

教室に通い始めて半年がたった17年3月ごろ、偶然訪れたのが宝泉寺だった。目に入ったのは、夕日でオレンジ色に染まった金沢の街並み。浅野川が流れ、民家が立ち並ぶ。人々が生きる日常の街の風景がやけに美しかった。

それから、宝泉寺には絶景目当てにたびたび足を運び「金沢は自分の街だ」と実感していたが、日々の暮らしの中で、疎外感が薄れるにつれて足は遠のいていった。

2月13日、久しぶりに再訪した。東山の宇多須(うたす)神社の横を通る子来坂を上るのがお決まりのコース。数日来の雪で、坂は真っ白になっていた。長さ10メートルほどの坂だが意外と急勾配で、雪で滑らないように歩いたせいか、少々息が上がった。

寺は坂を上がった右手に位置する。境内に入るため再び坂を上ると、市街地の風景が見えてきた。民家やビルは〝雪の帽子〞をかぶっていたが、変わらぬ風景の美しさに感嘆した。

それにしても、相も変わらず人がいない。今回は積雪の影響もあるだろうが、こんな絶景スポットなら観光客が大勢来てもいいはずだ。

「ここは泉鏡花が小説の中で『魔神の棲家』と紹介するほどで、酔狂な人でないと来ないです。近くにあるひがし茶屋街の観光客が来るのを、急な子来坂が止めています」と辻雅榮住職(57)は笑う。

辻住職によると、市内を見渡せる眺望は、加賀藩の軍事戦略上、不都合だった。藩は主に武人が信仰する隠形の神「摩利支天」を祭るお堂を建立し、要所の同地を隠した。子来坂ができると、住民も入りやすくなったが、人けのなさは変わっていない。

辻住職は「静かなこの空間は、瞑想や祈りに向いていると思います」と話す。確かに、この静けさはだったからこそしみじみとした気分になったのだろう。観光客には申し訳ないが、ここは金沢市民の「秘密の名所」のままにしておきたい。
(草野大貴)

きょうのイチオシ!

(「中日新聞」2018年2月16日)

金沢市民の「秘密の名所」(2018年2月18日「中日新聞」)

金沢市民の「秘密の名所」(2018年2月18日「中日新聞」)

まりちゃん

お寺は、文化財を見せるだけの場所ではありません。ホッと一息ついて、心の重荷を下ろしていただくところです。

ここは、秘密の隠れ家。誰にも邪魔されない、落ち着いたこの道場で、思う存分、冥想(ココロメグリ)しましょう。みなさまのご来山、心よりお待ちしています。

泉鏡花 【朗読】泉鏡花の「五本松」をきく 参考 金沢の夜景 卯辰山・宝泉寺より ~雪で白くなった黒瓦の町~まっさの日々旅人な暮らし

ステキな写真、1枚拝借しました! 合掌

オンマリシエイソワカ