毎月1日、摩利支天のご縁日。午前11時から護摩と法話があります。

護摩|三千大千国土

アンドロメダ銀河(M31)

アンドロメダ銀河(M31)

真言宗で用いる常用経典の一つに『観音経(かんのんぎょう)』があります。観音経は、お経の王様ともいわれる『妙法蓮華経』(法華経)の第二十五章にあたる「普門品(ふもんぼん)」の通称です。この普門品が観音菩薩について書かれていることから、『観音経』と呼ばれ親しまれてきました。この『観音経』は、『般若心経(はんにゃしんぎょう)』と並んで、宗派を超えて多く誦(よ)まれているお経なので、すでにご存じの方が多いかもしれません。

観音経を誦み進めていくと、次のような経文が出てきます。

若三千大千国土 満中夜叉羅刹 欲来悩人 聞其称観世音菩薩名者 是諸悪鬼 尚不能以 悪眼視之 況復加害

【現代語訳】もし三千大千国土のなかいっぱいの夜叉(やしゃ)や羅刹(らせつ)がやってきて、人を悩ませようとしても、その人が観世音菩薩の名前を称えるのを聞けば、このあらゆる悪鬼は悪意のこもった眼で見ることさえできないでしょう。まして、さらに危害を加えることなどできるでしょうか。

三千大千国土のなかいっぱいの夜叉や羅刹がやってきて、人を悩ませる‥

ん?「三千大千国土」って、どんな国? 誰が住んでるの? そう思いながら観音経を誦んでいると、また「三千大千国土」というフレーズが‥ もう気になって、気になって仕方ありません。

三千大千国土って、何なんですか?

三千大千国土のイメージ

須弥山のイメージ

虚空に浮かぶ須弥山のイメージ

仏教における三千大千国土は、「三千大千世界」とも呼ばれています。また「三千大世界」「三千世界」「三千界」「三界」という言い方もあるようです。

いずれにせよ一人の仏様が治める領域で、仏様の国土をあらわします。一人の仏様が法を説き教えて感化し、人々を仏の道に導くことができる範囲であるともされるため、一つの三千大千世界を「一仏国土」ともいうそうです。国土といえば、王様の統治権が及ぶ領域、国王の領土です。仏教では、生きとし生けるものが住み、生活する世界のことを言います。

実は、この三千大千国土の中に私たちも含まれているのです!

仏様が治める仏国土「三千大千国土」は、次のとおりです。

まず「虚空(こくう)」があります。虚空とは空間のことです。それ自体は事物に何の影響も与えませんが、あらゆる事物が存在できる場所です。自由自在に運動できて、変化することもできるという性格を持っています。それが虚空です。

この虚空の中に「風輪(ふうりん)」というものが浮かんでいます。風輪は、円柱の形をした輪で、緊密な空気のようなものです。

風輪の上に雨が降って、水がたまって、円柱形の「水輪(すいりん)」ができます。

水輪の表面の部分が凝結して「金輪(こんりん)」というものになります。この金輪の上に、一般的な意味での「世界」が存在していると考えられているのです。

世界」のまわりには、「鉄囲山(てっちせん)」という円形の山に囲まれています。鉄囲山は鉄でできていて、金剛(ダイヤモンド)のように固くて壊れることはありません。「金剛山(こんごうせん)」とも呼ばれています。

鉄囲山の内側には、八つのと八つのが同心円上に交互にあって、その中央にひときわ高い「須弥山(しゅみせん)」がそびえ立ちます。須弥山は、全体の高さが16万由旬(ゆじゅん)。その半分は海の中にあります。

これら須弥山を中心とする仏教的宇宙観、すなわち仏教経典からみた天文学は、いまの人たちからみたら、少なくとも2000年前の説話です。現代の進歩した科学からすれば荒唐無稽、たかが神話にすぎない、とるに足らない考えだと言われるかもしれません。しかしそれでも、仏教の教えを理解する上では、避けて通ることはできません。

由旬(ゆじゅん)
古代インドでの距離の一単位。帝王の軍隊が一日に進む距離といわれ、約10キロメートルとか約15キロメートルなど諸説があります。

仏教の世界観(須弥山を真上から見たイメージ)

須弥山世界(断面図)

須弥山世界(断面図)

須弥山は、あくまでも神々(天)の住処であって人間の住む場所ではありません。太陽須弥山のまわりを水平に回っています。

私たちはどこに住んでいるのかというと、鉄囲山と次のとの間にある大に存在する四つの大陸(四洲「ししゅう」)に住んでいるとされています。そのうち、南方に位置する大陸「贍部洲(せんぶしゅう)」というところだということです。贍部洲は「閻浮提(えんぶだい)」ともいわれ、この大陸の下に「地獄」が存在します。

海中にある四大陸のうち、南の「贍部洲」は三角形、東の勝身洲(しょうしんしゅう)は半月形、西の牛貨洲(ごけしゅう)は円形、北の倶盧洲(くるしゅう)は正方形をしています。その大きさはというと、南贍部洲の三辺はそれぞれ2000由旬、その南端は3.5由旬の長さがあります。東勝身洲は東に突き出た半島で、三辺はそれぞれ2000由旬あり、東端は350由旬の長さだそうで、ちょうど「くし」のような形に近い半円形のようです。西牛貨洲は直径2500由旬、周辺7500由旬ある円形をした大陸。北倶盧洲は各辺が2000由旬ある正方形状の大陸だということです。

仏教が説く三つの世界「三界(さんがい)」

仏教がとく三つの世界

仏教が説く三つの世界

仏教では、私たちが住んでいるこの世界を「欲界(よくかい)」「色界(しきかい)」「無色界(むしきかい)」という三つの世界にわけて説きます。この三つの世界(三界)に、生きとし生けるものすべてが存在し、生まれ変わり死にかわりを繰り返しています。

欲界は、欲望に満ちている世界。煩悩まみれに私たちが住む世界です。大きくわけて五つ。細かくは二十の領域にわかれるそうです。下の領域から、地獄(八つにわかれる)・餓鬼畜生(動物)・(人間の住む世界。四つにわかれる)。下に下がるほど苦しみが増します。

色界と無色界には、天(神様たち)が住む領域です。ごくわずかな煩悩だけが存在する領域といわれています。

色界は、欲界の上にあり、「色」すなわち物質、肉体だけが残っている世界。この領域は大きくわけて四つ、細かくは十七にわかれています。初禅天第二禅天第三禅天がそれぞれ三つに、第四禅天は八つにわかれます。これらの領域は、それぞれの領域に対応する禅定を修めたものが住む世界です。

無色界は、欲望も物質(肉体)もなく、ただ精神だけの存在が住む世界。物質がないのですから、場所すら存在しないのですが、図式化する都合上、色界の上におかれます。無色界は、空無辺天(くうむへんてん)・識無辺天(しきむへんてん)・無所有天(むしょうてん)・非想非非想天(ひそうひひそうてん)の四つです。これらの領域もまた、色界と同じく、それぞれの領域に対応する禅定を修めたものが住む世界となります。これらの「欲界」と「色界」と「無色界」をひっくるめた世界。それが「三界(さんがい)」です。

三界のうち、風輪から色界の初禅天までを「小世界」と呼びます。小世界が1000個集まったものを「小千世界」。小千世界が1000個集まったものを「中千世界」。中千世界が1000個集まったものが「大千世界」です。これを三千大千世界(一仏国土)と呼んでいます。

つまり三千大千世界とは、私たちが存在している基本となる世界(小世界=一世界)が、1000の3乗=10億ある世界という意味です。10億個の須弥山世界が集まった空間、これが三千大千世界です。

ちなみにお釈迦様は、「娑婆(しゃば)」という名の三千大千世界を治めておられます。娑婆は、私たちが住んでいる人間世界ですね。ここにも観音様がちょくちょくやってきて、私たちを教え導いてくださっています。

観音経のなかにも「娑婆」が出てきます。そこで観音様は何をしておられるのでしょうか?

観世音菩薩 有如是自在神力 遊於娑婆世界
【現代語訳】観世音菩薩は、このような何事をも思いのままにできる神通力をもって、娑婆世界を歩き回るのです。

なんと! 観音様は、(私たちを教え導くために)娑婆を歩き回っておられました!

仏教には、たくさんの仏様がいらっしゃいます。その仏様が、それぞれに「一仏国土」を治めていますので、仏教の宇宙世界は無限大と言えるかもしれません。本当にすごいです。

現代の宇宙観に通じる、三千大千世界!

ハッブル宇宙望遠鏡からの画像

ハッブル宇宙望遠鏡からの画像には、およそ1万ほどの銀河が写っているそうです。

仏教の宇宙観である三千大千世界の考え方は、実は、現代の宇宙観に通じていると言われています。

須弥山世界」が太陽系に対応するならば、「小千世界」が銀河という約1000億個の星の集団に対応するそうです。銀河団といわれる銀河が数百個ほど集まったものが「中千世界」に対応するということです。さらに宇宙の果てまで、銀河の密度の濃い「銀河団」と、反対に銀河のあまりない場所が続いていて、これを「宇宙の大規模構造」と呼んでいるのだとか。これが「大千世界」に対応するといわれています。

宇宙の果てまでは、138億光年といわれており、そのなかに銀河が1000億個あると言います。また1個の銀河には、約1000億個もの星があるそうです。

同じように仏教には、たくさんの仏様がおられ、それぞれ教化される仏国土の大きさが「三千大千世界」。ですからそれこそ、星の数ほどの「仏様の大宇宙」が拡がっているのです。

宇宙恐るべし! 仏教おそるべし!

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